日本語シャンソン新境地 パリ活動30年のワサブロー
30年間パリで活動してきた歌手ワサブローが、初めて日本語中心に歌うCD「異邦人 エトランゼ」を制作中だ。中原中也、与謝野晶子らの詩を取り上げ、日本語の美しい響きを自ら楽しみながら、新しい境地に挑んでいる。
モンタンやダリダはイタリア、アズナブールはアルメニア、ムスタキはギリシャ、シルビー・バルタンはブルガリア、アダモはベルギー・・・。シャンソンの世界には異文化を受け入れる度量の広さがある。79年にフランスに渡ったワサブローもその気風の中でムスタキらの高い評価を受け、パリのオランピア劇場などで歌ってきた。
そこで学んだのは表現力の大切さだ。「日本の歌は民謡の伝統なのか、声質をとても重視する。でもシャンソンは声では歌わない。声がかすれていても、詞の世界をきちんと表現すること、言葉に魂をこめて伝えることの方がはるかに大事」
CDに収めるのは与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」「晩秋」、谷川俊太郎の「朝のリレー」、中原中也の「生い立ちの歌」に曲をつけたものや、さだまさしの「秋桜」など13曲。
アズナブールの「戦争の子供達」を連想させる茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」など、「シャンソンには物語がある」というワサブローが深い感銘を受けた詩ばかりだ。
「僕にとってフランス語は最もよく鳴らすことのできる楽器。今度は日本語という楽器への挑戦です」
自らのジャンルを「フレンチシャンソン」と妙な名で呼ぶ。日本の「シャンソン」に違和感を持つからだ。「パリの日本レストランで花魁(おいらん)の格好をしたフランス人が『月は朧(おぼろ)に東山』なんて祇園小唄を歌っていたら妙でしょう。日本のシャンソン界にはそんなところがある。それはそれでいいけど、私はその世界にはいない。シャンソンは現代の音楽だから」
CDは夏に発売予定だ。問い合わせは電話03・5561・9008(日本音声保存)へ。(篠崎弘)